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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 
「悪い、ようやく彼女が来たから。おすすめ教えてくれてありがとう! お互い楽しもうぜ!」

 女達が朗らかに笑って、結城に手を振って散った。

「見たか、これぞ営業スキル! すげぇ疲れたけど、人気のところを教えて貰ったぞ」

 明らかに逆ナンされていた様子ではあったが、結城には思うところがあったらしい。こいつは気さくな笑顔でひとの下心や警戒心をほぐして、自分ペースに持ち込める奇特な男だ。

 だてに営業課長していない。
 
 あたしは駄目だ。特に初対面の相手には緊張してしまうから、営業モードに入らないと顔が強ばる。

 課長はどうなのだろう。凍えたあの笑みは、相手を許容しているようには思えない。跳ね返しているとしか。


「結城サン。彼女って、なんですか」

 結城を睨み付けると、結城は含んだ笑いを見せた。


「お前女だから"彼女"だろ? 俺、なにか嘘言ってる?」

「……うまく逃げたね」

「だろ?」

 あたしが舌打ちして見せると、結城は声をたてて笑った。


 しかしこの鍛えられた逞しい胸、腹筋!

 しかも足が長いとは何ごと!


 改めて見ると、いい身体してるわ。

 ボディービルをしてるような身体とまではいかないけれど、ムキムキになりすぎないこの絶妙さが、なんだか――。


「なにガン見するんだよ。えっち!」

「キモいわ!」

 パーカーを羽織ってはいる結城が、はだけて露わになってる胸の前で両手をクロスするから、あたしは思わず突っ込んでしまった。

「お前散々俺の裸見てるだろうが。上とは言わず下まで。なにを今さら」

「ちょっ、語弊があるから! 見てるのは満月の時だけで、普段は覚えてないし!」

「……へぇ、覚えてないんだ? じゃ見る? お前ならいいぞ、海パンの中もお望みなら見せてやろう」

「望んでないから!」

「陽~菜ちゃん?」

「………」

「可愛い陽~菜ちゃん?」

「可愛くないわよ!」

「こっち見ろよ」

「や!」

「いつも通り横においで?」

「………」

「まさか俺の裸に照れてるの? 今さら?」

「べ、別に……っ」
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