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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
そうなのだ。
あたしは満月以外のこんな真っ昼間から、まじまじと結城の身体など見たことがないのだ。
昔海行ったことはあったけれど、そこには衣里もいたし。
あの逞しい身体に縋って頬を埋めて、あたしは結城に抱かれていたのかと思えば、無性に恥ずかしくなって普通に結城を見れなくなったのだ。
「嘘つけ。目が泳いでるぞ」
「泳いでないってば……きゃっ」
公衆の面前で、結城が笑いながら奴の露わな胸にあたしの頬を押しつけてきたのだ。
「ちょ、なにを……」
「お前赤くなってるの、誰にも見せたくないんだけど」
「な、なな……結城、なにを……」
「言ったろう、デートだって。お前はその気なくても、今日は俺、開き直るから」
「開き直らなくてもいいから!」
「却下。それと今日、お前が俺を睦月と呼ぶのと、俺がお前のこと陽菜と呼ぶのならどちらがいい?」
「はい!? そんなの陽菜の方が……」
しまった。
誘導のような二択を選んだ途端、結城が嬉しそうに笑った。
「つーことで陽菜。俺はお前に不安にさせられているから、表に出ることにした。お前トラウマ抱えてるから、待つつもりだったけど、やめた。せっかくあいつが煽ってくれたし、そこまで言われたら男としては引き下がれねぇわ」
「あいつって?」
「香月に決まってるだろ。電話で実はいい奴だと思わせて、痛いところをぐりぐりと抉ることを忘れない。売った喧嘩を思い切り買われたよ、何倍にもなって。甘く見るなということだ」
結城は乾いた笑いをした。
「陽菜……わかってるんだよな、俺の気持ち」
突然振られたその話題に、あたしの心臓は思い切り跳ねる。