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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 
 
「だ、駄目。絶対駄目。あたし水着にならないもん」

「水着着てるのに見せねぇのは反則。俺の海パンだってお前見てるだろ?」

「結城はいいよ。別に海パンだろうがフンドシだろうが、自慢できる身体と顔を持っているから。だけどそんな結城と一緒にいるあたしの身になれ!」


 こんな貧弱、恥も恥だ。

 後ろ指さされたくない。

 
 そう思うのに――、


「こんの……馬鹿力……」

「お前がひ弱なの。そんなに見せたくないなら、そのパーカーの中に頭突っ込んでもいい?」

「嫌です! ちょ、人の目があるでしょ。なに痴漢みたいなことを……」

「失礼だな。水着の下がどうなってるか俺もうわかってるんだから、その上の布地くらい」

「結城っ!」


 その時だ。



「きゃー、営業課長がこんなところでいちゃついてるぅぅ。なになに、その角度はキス? ちゅうしちゃってるの――?」

「溺れてるのは沼にいるカワウソじゃなくて、僕の可愛いむっちゃんがカワウソに溺れてる~!」


 ポニーテールにビキニ姿の、超ナイスバディな衣里と、年の割にはめちゃくちゃ鍛えられている身体を披露する月代社長。

 どう見ても、現実の衣里と社長だ。幻ではない。

 なぜにふたりがここに――!?


「まあこんなところで陽菜と結城に会うなんて! 結城~、こんな素敵すぎるハプニングいかが?」

「真下お前~っ!」


 ポッカーンとした顔をふたりに向けたあたしの耳に届いたのは――、


「なんで真下だけじゃなく、ふたりでいるんだよ!!」

「だから素敵なハプニングだよ、むっちゃん」

 社長がにやにやしながら結城に言う。

「むっちゃん言うなってあれだけ言ってただろうが! にやつくんじゃねーよ、俺は絶対親父なんて呼ばないぞ!!」


 社長を父親だと激高して叫ぶ結城の声だった。


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