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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
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ベンチが並ぶ休憩スペースに、あたしと結城、衣里と社長が座っている。目の前には長くて青いチューブを水と共に滑り落ちる巨大なウォータースライダーがあり、喜ぶ利用者の叫び声が反響していた。
行き交う水着姿の美女達。結城と社長が気になるのか、ちらちらと周囲からの視線を感じる。ここで手を振って応えるのは、年を感じさせない社長のみだ。
「はあ……俺、なんで自分で言っちまうかなあ……」
若きイケメン結城はベンチで項垂れてぼやいている。
その横で、なにも知らなかったあたしは叫ばずにはいられない。
「なんで黙ってたのよ、あたし六年も知らずにいたってことじゃない。衣里も知ってるのに!」
そう、結城と社長が親子だったなんて、知らなかった。
結城と社長は肉親ではなく、義理の親子らしい。それでも親子には変わらないふたりの関係に驚いているのはあたしだけ。衣里は既にわかっていたみたいだ。
「真下はなんで知ってるんだよ」
「え、結城が話していたわけじゃないの?」
「言うわけねーだろ。俺、隠したいのに」
「衣里、衣里はなんで知ってたの? 結城じゃないとしたら……、もしや社長から?」
衣里は意味ありげに笑うだけだ。
社長から聞いてたんだな。衣里は社長とよく飲みに行ってるらしいから、酒の肴にでもしたか。
「水くさいなあ、結城。あたしも衣里もあんたの同期なんだから、あんたから話してくれたっていいじゃない。あたし達それを知ってあんたになにをするってさ?」
「別にお前達が信頼できないとかじゃなくて、単純にひとに言いたくなかったんだよ、同期だろうがなかろうが。だってさ、義理でも社長の息子だって言ったら、俺を見る目が変わるだろう? そういうの抜きにして、俺は俺の力でやりたかったんだよ」
確かに、結城の今の地位は彼の実力だ。彼が最初から社長の息子だと知っていたら、誰もが彼の努力を軽く見ていたかもしれない。社長から可愛がられているのも、当然なのだと。
だけどさ――。
「付き合い長いあたしですら、結城は努力しない七光りのボンボンだとでも思うって? へー、あたし散々だね、ひっどい女だわ。ね!?」