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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
結城の腕を抓ろうとしたら抓られるだけの贅肉がない。
腹立たしいからパシンと背中を叩いたら、結構力が入ってしまったらしく、結城が呻いて身体を震わせた。
「だから信用してねぇとかそんなんじゃなく、ひとりにでも言ったら、俺の意固地精神が弱まるんだよ。お前がどうのじゃなく、俺の問題なんだって。そういう副産物が嫌なんだよ、俺は。俺はこの身ひとつで勝負してぇんだよ」
すると衣里が吹き出した。
「ふっ、筋肉馬鹿」
「うるせぇよ、真下!」
副産物か。副産物、ねぇ?
副産物が多い課長はどう思っているのだろう。高学歴であんなマンションとあんな外車を持っているハイスペックな彼は。
その副産物によって得をしていたのなら、もっと手をかけて活用したりはしないんだろうか。なんだか副産物には無頓着のような気もしたのだ。
生活感のない家。
あまり使われていない外車。
台所も見たけれど、よく使われている形跡もなく、モデルルームにあるものように表面的なものばかりが綺麗すぎた。
彼の副産物は手をかけいいるような気がしなかった。
じゃあなぜそんなものを持っているのだろうか。
拒否も許容もしないで――。
色々考えていると、結城は話し始めた。
「……俺に病弱な母親居るって話したろう?」
結城は項垂れたまま、気怠げな目だけをあたしに寄越した。
「うん」
タコさんウィンナーのお母さんのことだろう。