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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
社長が大笑いしている間に、結城と衣里は戻ってきた。
あたしに渡されたものと同じマンゴー味のかき氷を食べる衣里は、あたしの視線に気づいて、にこっと笑った。いつもの笑顔で。
「美味しいね、陽菜」
衣里があたしの表情に気づかないはずはないだろう。
それを完璧な笑顔で取り繕うぐらいには、あたしは衣里の真情に触れることを拒まれている。
「むっちゃん、パパにもかき氷!」
「むっちゃん言うなって! だれがパパだ、気色悪い。食いたけりゃ食えばいいだろ。こうやって」
あたしが自分の口に運ぼうとしたスプーンが、突如方向を変えて結城の口に入った。
「ん、美味しい。もうひとつ、あーん」
条件反射的に、ひな鳥に餌をやるようにかき氷を掬って結城の口に入れた。スプーンを舐める結城は可愛さを気取ろうとしているけれど、あたしを見る目がなにやら妖しくて、あたしは顔を背けた。
満月の夜を思い出したから。
あたしの身体を舐める結城を思い出してしまったから。
なんという目をしてくるのよ!!
「真下、僕もあーん」
「無理です。あんなバカップルになりたくないです」
「衣里、バ、バカップルってなによ!?」
「あんたと結城。普通人前でそこまで間接キスしないから。そこまでキスしたいなら、どうぞ私の目の届かないところで思う存分ディープでも」
「僕、むっちゃんがカワウソの口の中で舌を動かすところを見たい!!」
「だからむっちゃん言うな! 鹿沼とのディープは絶対見せねーからな! もったいない」
「結城っ!! あたし結城とディープなんてしませんので、あしからず」
「「「ええええ……!?」」」
「結城までもか! あんたはどっちの味方よ!!」
笑いが絶えないあたし達。
だけどそれは心の奥を見せたくないからなのか、どことなく空々しくも感じる。