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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
子供のようにはしゃいで、ウォータースライダーの順番待ちの整理券を先にとりにいってくれている衣里と社長を見てため息をついたあたしに、結城は言った。
「真下のこと、知らぬ顔で通せ」
「え、でも……」
「子供じゃねぇんだし、隠したいから話してねぇんだ。真下も社長も、俺が社長の息子だと言いたくないのと同じに」
「………」
「言えばいいってもんじゃない。聞けばいいってもんじゃない。真下が同情を欲しいと思うか?」
「それでも、友達なんだし……なにかしてあげたい」
「だったら」
結城は言った。
「友達ならなんでもしたいというのなら、俺は?」
「え?」
「俺はまだお前の中では友達なんだろう? だったら俺が、どうしてもお前が欲しいと言ったら、お前は無条件でお前のすべてを俺にくれるのか?」
「……っ」
「そういうことなのさ、真下も。欲しいものは他人から得られるものじゃない。自分の戦いだ」
結城は険しい目を細めて、手を振る衣里を見つめていた。