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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 


 ***


 ウォータースライダーはかなり人気のアトラクションらしい。整理券での案内だというのに、ウォータースライダー乗り場まで上がる階段は、まるでバーゲンのように混み合っている。

 あたしは結城と共に係員にパーカーを預けてしまい、水着姿だ。

 だけどまあここまで人で込んでいるのなら、男の視線を奪うモデル体型の美女衣里と女の視線を奪う義理の親子の連れとは周囲から思われず、哀れまれることもないだろう。

 あたし達は横一列に並び、右から衣里、あたし、結城、社長となっている。出来るのなら衣里と社長を並ばせて上げたかったが、衣里がすっとあたしの横に来たのと、社長が可愛いむっちゃんの隣に並んでしまったため、こんな配置になってしまった。

 ウォータースライダーは、ふたりひと組だ。

 四列のうち左ふたりが先に出る。あたしは衣里と滑るのは嬉しいけど、衣里は本当は社長と滑り落ちたいんじゃないんだろうか。

 どうにかしてふたりで滑らせて上げたいなどと考えているあたしに、衣里があたしの耳に囁いた。


「あいつ、男達の目から守ろうと威嚇してる。なんかおかしい、番犬かって言うのよね」


 そう言われると、結城の険しい目がきょろきょろと動いている。

 今度はあたしが結城の耳に囁いた。


「結城、衣里を社長との間に挟む?」

「なんで?」

「だってその方が衣里、男から狙われないし。そこまで番犬しなくても」

「だれが真下だよ!」

「は?」


 きょとんとしたあたしの横で衣里が吹き出した時、乗り場がよく見える位置に来た。

 なにこれ、いちゃいちゃカップル専用?

 ひとつの大きなタイヤにふたりが前後に抱き合うようにして滑り落ちるらしい。

 その密着度合いは同性でも異性の組み合わせでも、ちょっと恥ずかしくなるくらいだ。

 今のカップルなんか、巨乳の女の子の胸が潰れるまで彼氏に抱きついているよ。ああ、前の男の子嬉しそう。背中に乳がめり込んでないのかしら。


 駄目かな、衣里と社長組み合わせるの。

 衣里に思い出作って上げられないかな。これも駄目なのかな。
 
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