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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 


 そうなのだ。

 キスマークがまだ胸元中心に残っていたため、防水のコンシーラーをつけて誤魔化したのだ。皆がなにも言わないから、水着で覆えば誤魔化せたのだと思っていた。それを、後ろ向きになっているこんな時に言われるとは。

「あんな涼しい顔して、すげぇ独占欲。お前かわす気あるの? こんなにつけられてて」

「いや、その……」

「俺だってつけてぇの我慢してたのに。お前嫌がるから……嫌がるから、俺なにひとつしていないのに」

 結城のやるせなさそうな声が耳に響いて、うなじあたりに熱いものが吸い付いてきた。

「ちょ、結城!!」

「数には負けるけど、心は込めた。……俺の印だ」


 結城の唇があたしの耳を捕らえて、あたしは身を震わせる。


「刺激が欲しいくらいのものなら、許してやる。だけどあいつに、最後までは抱かれるなよ」

「……っ」

「この身体を隅々まで知るのは俺だけだ。すげぇ俺のドストライクな水着着てきたから、想像しちまったよ。お前がどこを触れば、どう反応するのか」

 結城の手があたしの肌を這う。

「脱がしたい」

「結城、やめっ」


 拒むと結城の手の動きが止まり、代わりにぎゅっと力強く抱きしめられた。

「陽菜」


 苦しいほど、結城の熱に染まる。


「俺の……陽菜。俺だけの」


 震えるような熱い声が届いた。

 どうしていいのかわからず、ただ胸が苦しい――そう思った時だ。


「GO!」


「え、ゴー……きゃあああああああ!!」


 結城のかけ声と共に落下したのは。

 凄まじい速度でぐるんぐるん回る。


「きゃあああああ!!」

「あはははははは!!」


 あたしの叫びと結城の笑い声が重なる。


「陽菜――っ、すげぇ好き――っ!!」

「え、なに聞こえな……ぎゃああああああ!!」


 あたしは自分に精一杯で聞いていなかった。


「落ちるのは俺にしろよっ!! 俺は、同じことを繰り返したくねぇんだよっ! お前をもう傷つけたくないんだ――っ!!」


 ……謎めいた結城の言葉を。

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