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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「わ、私買います。そ、その……記念だし、ね、陽菜!! 買うよね!?」
あたしに振るか!!
やだよ、こんな気味悪いフレーム。だけど、衣里の目が切実だから。
「そ、そうそう! 買わなきゃ、せっかく撮ってくれたんだし。あたしのありますか?」
仕方ないから合せてあげることにした。
ひとりでは買えないらしい、このツンデレめ!
「ありがとうございます!」
ここの施設では金銭を持ち歩けない代わりに、ひとりひとりに最初に受付で渡されて今も腕にしているたゴムの腕輪に、お店の機械を通して都度支払い金額が加算され、出る時に支払うことになるらしい。
「ではお客様は、こちらでーす」
あたしに渡されたのは――。
「うはははは! カワウソ~が沼に溺れてる!!」
どう見ても人間界には住んでいなさそうな生き物。カワウソというよりカバだ。後ろの結城はイケメンのままなのに、あたしはあまりに醜すぎる。
なにこれ、なんでこんなに差が。
衣里も社長も綺麗に撮れてるのにひどいや、美男美女は綺麗に撮れてるのに、ひどいのあたしだけじゃんか!
500円出してこんなもの買いたくない、やだ!!
「あ、俺が買うから。家に飾っとこ。なかなかアウトドアっぽいし。カワウソ捕獲~って」
「結城っ!!」
「あ、お客様はいい方ですよ。私、ちょっと前に凄いの撮りましたから」
「凄い?」
「ええ、ここでの話、心霊写真みたいなもので。お連れ様の男性がまた、見事に爽やかで。どれもこれもがホラーだと、女性の方は落ち込んでました。こちらの写真らは買われないと、あちらのボードで飾って見る方にも楽しんで頂けるようにしているのですが、その写真もあそこのボードで飾ってます」
「飾ってますって、飾られるの?」
「あ、買われなかったものは」
「買います!」
こんなの絶対ひとに見られたくない!
「俺が買うって言っただろ!」
「駄目、あたしが買うから! お姉さん、あたしに」
「俺に!!」
「カワウソ写真人気だなぁ~」
「うふふふ、これ飾っておこ」
……結局あたしが競り勝った。こんな写真処分しなきゃ!