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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
***
月に一度、高まる性欲があたしを壊す狂気となる。
それは女性ホルモンと関係している月経とは無関係に起こる。
言うなれば、痒みに悶え狂いそうな、セックス中に寸止め食らって焦らされているような、発狂して頭が爆発しそうな、そんな猛々しい感覚だ。
忘れもしない、高校3年の6月――。
それは突如起きた。
ざわざわと人の声のような耳鳴りが酷くなり、誰かの泣き叫ぶ声がしたかと思えば、身体が興奮状態になってわけがわからなくなって。
満月と、男の匂いと。
あの丸い月のように、底知れぬ性欲を快楽で満たされたいと我武者羅に願う。
強大な渇望は、苦痛だ。求める心だけが大きくなりすぎて、ついていけない身体は悲鳴を上げながら、あたしの心を壊していく――。
だけどそれは、時間が経てば治るのだ。
なにひとつ代わり映えのない日常に戻るというのに、必ずそれは一ヶ月ごとに起きる。
最初の犠牲になったのは彼氏だった。あたしの豹変ぶりに嫌われ別れることになっても、あたしは月に1回、単数もしくは複数の、あたしの性欲を満たせるだけの激しいセックスを出来る男を求めた。
一度だけベッドの四隅に括り付けた布を、あたしの両手両足に結んで、その日をやり過ごそうとしてみた。
だけど、穏やかな意識に戻った時は、隣に裸の男がいた。しかもそこは、神社の社で、裸で服がなかった。寝ている男の上着を奪って家に戻れば、窓ががらりと開いたまま、手足を縛っていた布が引きちぎられた残骸だけが、ベッドに繋がっていた。
我慢すればするほど、あたしは性欲を満たすためになにをしでかすのかわからなくなる。
変な病気になったり、子供が出来たりしていないのが奇跡的なことだった。