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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「てっきり朱羽くん、なにかアクション起こしたと思っていたわ。なんでもたもたしてるのかしら。ヒナちゃんと朱羽くん、美男美女でお似合いだと思うのに。それに朱羽くん一途――」
「すみません、俺達離脱します」
あたしの腕を引いたのは、機嫌が悪そうな結城だった。
「社長、真下。俺達はもうちょっと遊んでから帰りますんで、気をつけて帰って下さい。ええと、宮坂専務と吾川さん、俺は陽菜と八年の付き合いがある同期で、同じ会社で営業している結城と申します。香月課長をご存知で随分推されているようですが、俺しぶとさには自信がありますので、引き下がる気はないです。俺も正念場なんで。では」
どこから突っ込んでいいのかわからない。
わからないけど。
「結城――っ!!」
肩に担ぎ上げられたまま歩き出した結城に、あたしは叫ぶしか出来なかった。笑う結城の背中をバンバン手で叩いて。
「あはははは! 香月推しの女にむかついて、初対面なのについ宣言しちまった! 真下をあの専務から守ってくれたのに、俺にそんなことさせるなんて、お前も相当悪だよな」
「なにが悪……下ろしてよっ」
「このまま俺のものとして周りに見せつけるのと、ここで思いっきりディープかますのと、どっちがいい?」
「どっちも嫌――っ」
「だったらこのままな。これからは俺の告白タイムその1」
「そ、その1って何回もあるの?」
「当然だろうが。あんなに深く身体に刻みつけても、現れたばかりの違う男に刻み込まれる方を意識するアホ女だ。何度も脳みそに刻みつけて縛りつけねぇと。ええと、どこがいいかな」
「なんか怖い。怖いからまた今度」
「駄目だ。お前だって覚悟してきたんだろ? 俺だって覚悟して言うんだ。だから……聞けよ、俺から逃げないで。怖がるな」
「……っ」
哀願するような顔を向けられて、あたしは頷くことしか出来なかった。
その頃、我に返った専務が、にやりと笑って悪だくみを企てているとは知らずに――。