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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

***
「よし、ここだな。聞いたのは」
結城があたしを肩に担いだまま、あるアトラクションにやってきた。
近くにある看板を見ると、岩場を模したこの大きなプールは、時間によって流れるプールと波のプール、或いはふたつ同時に来るものに切り替わるらしい。
今水面は落ち着いてはいるが、いずれきっと大きな動きが出るのだろう。
子供とか老人がそんなことになるプールとは知らずにここに居たら、きっと大変なことになると思う。
「え、ここで泳ぐの!? あたし泳ぎまったく自信ないんだけれど。浮き輪欲しいくらいなんだけれど」
「誰が泳ぐかよ。ちょっと捕まってろよ」
結城はそのままプールの中に入る。
背が高い男だから、肩に居るあたしは水面に浸かることがない。水の上に宙に浮いてるような変な気分だ。
結城はそのままじゃぶじゃぶと水を掻き分けて、奥に広がる岩みたいなものが沢山ある場所に移動する。
その岩はひとつひとつが高く、階段のように平らな上面が積み重なっているのは、恐らく波打つ水面からの避難所として用意されているんだろう。
「聞いた話によると、ここには河童が出るらしい」
結城は突然、神妙な声でそんなことを言い始めた。
「河童!? 河童って、頭にお皿がついてるあれ!?」
「ああ。水に潜りながら頭だけ出して睨み付けているのを、夏あたり目撃されていたそうだ。なんでも皿が女みたいな長い髪の毛で隠されていたみたいで、ハゲ頭のようだったとか」
「髪生えた河童!? ああでも、確かに清酒○桜の河童絵も髪生えているか」
「お前古いの思い出すな、何歳だよ」
「結城と同い年よ! だって河童といったらキザ○ラカッパでしょ、むしろそれ以外に河童があるのなら教えて貰いたいわ」
「水木し○るも書いてるかも」
「ああ、なんか昔昔に古本屋で見たかも。髪ありそうだね、確かに。あるんだ、河童に髪の毛」
意外なところで感心してしまった。
「ここからは海や川に出られないだろうから、そこの岩間にまだいるかもしれないぞ、気をつけろよ?」
「気をつけろって、なんでレジャーパークに河童が出るのよ!! どこから紛れたのよ!!」
結城は声をたてて笑う。

