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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

「陽菜。お前と知り合った時、千里とはもう別れ話をしていたんだ。あいつから告られて付き合ったけど、あまりに束縛が激しくて疲れてしまって。だけどあいつがあと一ヶ月だけ恋人のフリをすれば別れると言われた状況で、お前と会った」
結城が辛そうに笑う。
「……お前の満月の状態を知った時には、まだ一ヶ月になっていない状況だったけど、お前を抱き始めた時は既に別れていた。お前がどう千里から聞いてるかわからないけれど、千里よりお前を優先したと言われているのは、千里が復縁を迫るのを聞き入れずにお前のとこに走った時のこと。陽菜はなにも壊していない。元々なかったんだから」
「初めて……聞いたよ、そんなこと。だってあたし、千里ちゃんから結城は彼氏だって聞いてたし、彼氏を奪った女って言われたよ?」
「俺、千里が彼女だとか付き合ってるとか、俺からお前に言ったことあったか? 俺はとっくに別れてる気でいた」
考えてみれば結城からそう言われたことはない。すべて千里ちゃんから聞いたことだ。結城はシャイだからそんなことは言わないと。
「お前が勘違いしているのがわかったのは、お前に謝られてこれから満月の相手をしなくてもいいからと言われた時だ。あの時"今までありがとう"とお前に言われて、これで終わるのかと思ったら身震いした。だから俺はお前のその罪悪感を利用して、お前を俺に縛りつけた。そうしたら見事に高みに上げられちまったけど、……言ったろう? 俺、お前が思ってるような善人じゃねぇんだよ」
結城はあたしの手とり、親指の腹で手の甲を撫でた。
「……満月の相手をしているのに後悔はしたことないぞ。何度も言うけど、嫌々してねぇから。満月が毎日来ればいい……そう本気で思ってる」
優しげだけど苦しげな声で、結城は無理矢理に笑う。
「なんで満月の関するあんな約束しちまったかなとは思ってる。なんで一ヶ月に一回しかこない満月の日しかお前を独占出来ないんだろうって。なんで自由に昼間から抱き合えないのかって」
「結城……」
「それでも満月だけでも、お前は俺のものになるのなら。他の男に抱かれないのならと、お前のあの"今までありがとう"を聞きたくなくて、お前にこうやって言えなかった。女々しいんだ。俺……ヘタレさ」

