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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

結城は、満月の次の日の朝、付き合おうとか言っていたんだ。
それを、満月限定の関係を解消しようと言ってその話を終わらせたのはあたし。知らないふりをしていた。
「友情や同情じゃなくて、本当に恋愛感情なの?」
……そうやって、乗って返すこともしないで。
「ああ、恋愛感情。男としてお前が欲しい。恋人になりたい」
結城ははっきりと言った。
「でも恋愛は終わっちゃうよ? 千里ちゃんとも終わったじゃない」
「ああ、そこも言われると思った。いくら俺が終わらないと言っても、過去は終わっているから。……だけど、お前だけは失いたくない。八年かけて俺はお前に惚れてる。満月の時のお前をひっくるめて、俺はお前がいい」
「……満月の時も……」
「ああ、俺を全力で求めるお前が可愛いよ。俺の名前を呼ぶお前が愛おしいよ。満月の夜のお前を、誰にも見せたくねぇと思う。その役目は、絶対降りたくない。たとえ満月以外のお前の心が、俺になかったとしても」
結城の心が苦しいほど熱い。
「あたしは……結城を都合いい男にしたくないの」
「最悪、それでもいい」
「結城……」
「勘違いしないでくれ。お前の身体が欲しいからじゃない。身体だけでも欲しいからだ。友達とはこんなことはしないって、ひとりで悦に入れるから」
「……っ」
「だけどそういうのを押しつけたくねぇんだよ。それでいいならとっくにしてる。だから今お前に願うのは、恋愛対象に俺も入れてくれということだ」
縋るような黒い瞳。赤く揺れていたものが少しずつ闇色で蠢く。
「男はあいつだけじゃねぇぞ。俺も男だ。お前に惚れてる男だということを自覚して欲しい」
「結城……」
「今すぐどうこうしろとは言わない。八年も待ったんだ、今さら急ぐ気はないけど、さっきも言ったように俺は焦ってる。お前にはそんな姿見せたくなくて余裕ぶってはいたいけど、めちゃくちゃ焦ってる。お前が、あいつにだけは違う態度を見せるから。八年で初めての反応だから。俺とはまた違う特別性があいつにもある気がして」
結城はあたしの手をぎゅっと握った。
「一度寝たことがその引き金になるのなら、俺と何度も寝ていることを思い出せ。満月だからと記憶が鮮明に蘇生しなくても、俺はお前の身体に深く刻んでいる。快楽からでもいい、俺だって男だということを意識して」

