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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

 笑うあたしを優しく見ながら、結城はあたしの頭を手で撫でる。


「お前、俺のところで笑えるだろ?」


「ん、そうだね。結城といれば安心出来るし、すごく信頼してる」

「だろ? そういうところをよぉく見ていけよ? めっちゃ加点していけよ?」

「あはははは、了解!」


 もっと、キツい話になると思った。

 こんなに笑い声が出るのは、結城のおかげなのだ。

 あたしが気まずくならないように、結城はかなり努力してくれたと思うから。


 ……この二週間、考えてみなきゃ。

 結城に対するものが課長に対するドキドキに勝るものか。

 二週間後にそれでも課長に抱かれたいと思うのか。

 友情以上の大切さは、恋愛になることがあるのかどうか。

 結城とは終わらないと思えるものか。

 結城の真剣さに、あたしも真剣に応えなきゃ。


 結城はふと思いついたように言った。


「……あいつはお前に告ったの?」

「されてないけど」

「告りもしねぇのにそんなとこにキスマークつけたのか!?」

「結城もつけたくせに」

「陽菜、あいつに流されるのではなく、お前の意志をちゃんと見ろよ。俺、負けたくはねぇけど、お前がちゃんと出した答えなら、俺も納得出来るように努力するから。俺、お前を女としても好きだけど、友達や同期としても好きなんだわ。だからお前がいい加減に出したものでなければ、俺もいい加減にはしないから。……お前を尊重する」

「ありがと。結城、ほんとにありがとね! あたしも真剣に受ける」

「よし、告白その1成功!」


 結城は笑いながらあたしを胸に押しつけた。


「……実は俺、お前に隠していることがあるんだ。お前が真剣に受けてくれると思ったら、そこがすげぇ気になってきた」

「なに?」

「……だけど言えない。どうしても言えない。……お前が今、香月に満月のことが言えないように」

 課長の名前が出てきて、びくりとする。

「……結城は夜の帝王で、実は女侍らせていたとか?」

「アホ。他の女なんて抱く気ねぇよ、俺女作らなかっただろうが。そうじゃなくて、それをするより最低だと思う。だから……今まで告らなかったのもあるんだ。告れないというか、その資格がないというか」

 結城の声のトーンが沈んだ。

 
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