この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

「言いなよ、あたし大丈夫だよ。あたし結城にずっと助けられて救われてきたの。だから告白同様、前向きに受け止められるよ」
「駄目だ」
「結城、言ってよ! 隠し事なしで行こう? あたしも結城に隠し事しないから」
かなりの沈黙の後、結城は身体を離して呟いた。
「……俺、高校の時荒れてたんだ」
「うん? 社長が助けてくれたって言ってたよね?」
「……俺の高校、N県の扇谷なんだよ」
「はあああああ!? なにそれ!! そこはあたしが卒業したとこじゃない!!」
「違うんだ」
結城の辛そうな声が聞こえる。
「はい?」
「お前はそこを卒業していない」
「え? なにを……」
思い出したくない高校だけれど、卒業した高校の名前くらいは覚えている。そこに結城なんていう同級生はいなかった。
一体結城はなにを――。
「あのさ」
結城が決意したように口を開いた時だった。
やけにパトカーやら救急車やらが騒がしいなとは思っていたけれど、見下ろす施設の中はさらに喧噪で。
「結城、なにか事件でも起こってるのかな」
「え? あ、本当だ。なんだろう、火事とかか?」
「じゃあ早く逃げなきゃ!」
ピンポンパンポン♪
館内放送がかかった。
『迷子のお呼び出しを致します』
それはここにいる時、何度も聞いている。そりゃあ大きな施設だ、迷子になる子供くらいいるだろう。
だけどこんな時に、長閑(のどか)すぎるよ。
『鹿沼陽菜様、鹿沼陽菜様 いらっしゃいましたら……』
「あたし!?」
そして同じところからなのか、違うところからなのか、割り込んできたのは――。
『カバ、早く来い! フロントだ、俺を助けろ!』
『ですから! 渉は確かに下半身と頭はここのキャラみたいにゆるゆるだとは思いますけど、女の子襲ってませんから! ヒナちゃんの誘拐犯でもないですから! ロリコンでもないです、私は28で……はああああ!?』
「今の、宮坂専務と沙紀さんの声のように聞こえるけど」
「ああ。なにやってるんだ?」

