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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

炎の男結城と氷の男課長が睨み合っての対峙に、あたしが口を挟むことは許されないらしい。
一体なんなのこの状況。
それじゃなくてもなんでこんな場所にぶちギレ課長が私服で現れたのか、頭ついていけないっていうのに、なんで健全だの不健全だの、そんな話をしてるの!?
ふと思った。
炎と氷が戦ったら、どっちが勝つんだろう。
炎が温度を失って凍るの?
氷が溶けて蒸気になるの?
ピンポンパンポン♪
一度聞いた、明るい電子音が響き渡る。
『迷子のお呼び出しを致します。鹿沼陽菜ちゃん、鹿沼陽菜ちゃん……』
今度はちゃん付けだ。心なしか切迫しているような気がする。
なにがあったんだろう、鹿沼陽菜ちゃんに……って。
「だから、なんであたし!? 同姓同名なのかしら」
……それだけではなかった。
『ヒナちゃーん、どこに居るんだ!?』
『大丈夫だよ、おじさん達が今助けて上げるよ、犯人は捕まえたから安心して出ておいで~』
メガホンを持った、警察の制服を着ているおじさん達が叫んでいる。
なに、ヒナちゃんがどうしたって? 犯人ってなにか犯罪でも起きて、それで騒がしかったの?
少なくともあたしじゃないことだけは確かだ。あたしは、警察官から猫なで声をかけられるような年ではない。
それでもこの居たたまれない心地になるのはなぜなのだろう。
課長があたりを見渡して言った。
「……一時休戦です。さあ、あそこの自販機に身を隠して。……ちっ」
このひと今、思い切り舌打ちしましたよね?
すごく目つきが「悪」なんですけど!!

