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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

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長身のイケメンふたりに挟まれた貧弱な女が、大きな自販機の影に隠れている。
ここは狭い、狭すぎる。
なんでこんなところに隠れることになったっけ。
視界に居るのは、コスプレ警察官ではなく本物の警察官のようだ。
「……香月、なにかしたのか?」
結城が小声で聞きながら、さりげなくあたしの手を繋いで彼の後方に持っていき、驚くあたしに悪戯っ子のような笑みを見せる。
狭すぎて動く隙間がない。取り払えるほどの空間がなく。色々抓ったりひっかいたりしているのに、結城は笑って身体を震わせている。
課長はそんなあたし達よりちょっと前に身を乗り出すようにして、警官の様子を伺っている。まるでスパイ映画でも見ているようだ。
「私、さっきまで都心に出ていたんです。そうしたら不健全で不埒な通報を頂いて」
その目は警官の動きを真剣に追っているというのに、
「家に戻って車とってくるのも時間の無駄だし、タクシーなら渋滞に巻き込まれたら苛つくし」
あたしの小指と彼の指が軽くぶつかると――、
「傍に駐車違反取り締まっている警官が、パトカーに乗っていたので……」
手を引こうとしたあたしを逃さないというように、あたしの小指に彼の指が絡みつき、何本かの指できゅっと握られた。
――っ!!
手の中で一番小さな指なのに、身体の中で一番敏感な部分のようにも思える、このぞくり感。焦らされた身体にやっと触って貰えたような、そんな引き攣ったような快感に喘ぎ声が出そうになる。
課長の熱にくらくらする――。
いかんいかん、なにを考えているんだ、あたし。
なにをやっているのよ、こんなとこで。指が偶然絡んだのかもしれないし、指を離さなければ。課長だけではなく結城とも。
そんなあたしの耳に届いたのは。
「私の娘が誘拐されたと騒いで、パトカーに乗せて貰いました」
「「はああああ!!?」」
驚きすぎて、手を離すタイミングを失ってしまった。

