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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

「渉さん、あんな感じでも手乗りインコオスとメス飼っていて、最近交配が上手くいって子供が生まれたんです。沙紀さんも喜んでいるようで」

「は、はあ」

 それがなんなんだろう。

 あの専務がインコを可愛がる姿なんて、気色悪いけど。
 

「だからヒナが沢山で。それは事実です」

「……?」

「私もちょっと欲しいように、メールに書いたのは脚色です。実際私は既に断りましたので」


 あたしは結城と顔を見合わせた。


『ヒナは俺のところだ。欲しければ下の住所に来い』


「「まさか、インコのヒナにする気!?」」


「初めからそのつもりでしたが、それがなにか?」


 眼鏡のレンズがキランと冷徹に光る。


「な、なんでもありません……」


 ま、まあ……騒いだこの鉄仮面がそうだと結論づければそうなるのでしょうが、専務があまりにも不憫すぎる。

 
「では、ちょっといって参ります」


 指が離れて、課長の熱がなくなる。

 代わりに視線が絡み、ほんの少し……切なげに笑われた気がする。


「……っと、これを着て下さい。そんな簡単にひとに身体を見せるなんて、安っぽいことをしないで下さい」


「俺は見せたいけど」

「私は見せたくない」


 苛立った声を出した課長は、結城を遮るようにして、彼が脱いだカーディガンをあたしの肩に羽織らせた。

 その時、彼の髪先が汗で濡れていることに気づいた。
  
「濡れてる……。汗……まさか熱!?」

「それはもう大丈夫、おかげさまで今日は平熱です。……最短でここに来るのに必死で、渉さんすらダシに使うほど焦っていたのだから、汗くらいかくでしょう。別に驚くことでもない。ではまた」

 会釈しながら課長が出て行った。


 ねぇ、課長。

 そんなにまでしてここに来た理由、なんだったんですか?

 
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