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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

「うわー、なに俺どうすればいいわけ? あいつに同情すればいいの!?」
課長の話に結城が笑う。……笑おうと努力している。
なんだかそれがわかって辛くなって黙り込むと、あたしのおでこをデコピンされた。
「いたっ」
「同情するなら、俺を男として好きになれ」
ふんと結城は口を曲げた。
「俺に、同情とかそういうのはいらねぇから。普通でいろ。あいつの話をわざとしないようにされる方が俺辛いから。そういうので気を引きたくねぇんだ。男としてあまりに情けねぇだろ」
「情けなくないよ。結城はいい男だもん」
「うっわー、ここで号泣していい?」
結城が頬を両手で覆うようにして、目だけあたしに寄越してくる。
「やめてよ、たくさんここにひといるじゃん! 大男泣かせるなんて、あたしどれだけよ、何様よ!」
「あははははは!」
結城の笑い声を聞くと安心する。
結城の笑いにあたしは癒やされてきたから。
「……だけどまあ、香月は刺激的な奴だということはわかった。あれは俺でもドキドキするわ。ただのインテリ坊ちゃんじゃねぇぞ。あのお偉いさんとの写真見せてた時、あいつ凄くどうでもいい顔をしてたの見てた? 普通さ、自慢しね? 俺ならめちゃ喜んで説明すると思うけど。しかもお前が知ってる大物なら」
「マンションも車もあんな感じだからなあ。別にどうでもいい、みたいな」
「与えられすぎてどうでもよくなりすぎている……というのもなんか違う気がするんだよな。なんかさ、違和感ねぇか? あのハイスペックだけれど、そうした上流の世界に染まってないというか。相応しくないとかの意味じゃなくて、そっちの世界よりも俺の方に近いような。アンダーグラウンドとは言わねぇけど、あいつも相当やんちゃだったように思える」
「やんちゃ? 課長が? でも心臓悪かったんでしょ」
「あ、そうだな。……はは、こりゃいいわ。鼻持ちならねぇ奴かと思いきや、謎だらけじゃねぇか。なんかさ、人間としてもあいつ面白そう。ますます営業欲しいわ~」
「気に入ったの?」
「……ん~、かもな。……って、俺の方が落ちてるじゃねぇかよっ、あ、俺そんな気ねぇから! 男なんて趣味ねぇからな!?」
「うん?」
なにやら結城が焦っていた。

