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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon

そういえば結城には、親友と呼べる男がいないことに今更ながら気づく。
あたしと衣里を友達だと公言しているけれど、あたし達ぐらい仲良く飲みに行けるような男性は、社長くらいしか思いつかない。
結城、同性の友達いなくて平気なのかな。中学高校時代の友達とか、地元の友達とかいないんだろうか。
あたしと同じ高校を卒業したとか言ってたことを思い出す。
「結城は、男の友達いないの? 本当の地元は? あたしと同じはずないじゃん、あたし結城のこと知らないんだから」
そう言うと、結城は辛そうに顔を歪めた。
「本当の地元、か。親友と呼んでいた男は、高校にいたけど……今はいねぇんだ」
「あ、ごめ……」
「本当に覚えてねぇの?」
結城の目が細められる。
……なにか怖い。
「なにを……」
結城が怖いから、思わず後退りしてしまう。
無表情なこの顔が、あたしを詰問しているようで怖くて――。
キ……ン、と頭の中の一部がなにかに触れられ、鋭い痛みを感じたあたしは顔を顰めた。
やだ、満月じゃないのに……、あの痛みだ。
ざわざわとひとの声が大きくなる気がする。
「やだ、結城……満月の……満月みたいな……」
「え?」
あたしが焦りながら結城の腕を掴んで言った、その時だった。
「結城さん」
その声に、痛みがすぅっと引いていく。
喧噪を鎮めたのは、玲瓏たる課長の声。
「……落ち着いた」
小声でそう言うと、結城は安堵したような笑みを見せて、近くに来ていた課長に向いた。
「お願いがあるんです」
あたしも結城も、課長を見た。
「あなたの車に、乗せて貰ってもいいですか? 私、車がないんです」
「そこの専務は?」
「沙紀さんがいるのに、乗れません。というか、犯人にさせてしまったのでそこは遠慮しないと……」
「俺だって、こいついるけど」
「乗せて下さい」
課長スマイル、キラッ!
うおっ、眩しい……。

