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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

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 作戦会議と称して、専務と沙紀さん交えて焼き肉を食べることになった。

 なんでも沙紀さんは焼き肉とビールが大好物らしい。

 運転する専務のことなんてなんのその、食べるわ飲むわ、親父顔負けの豪快さ。外見上は絶対そんなタイプには見えないのに。

 それを見つめる専務の眼差しが甘いこと甘いこと。甲斐甲斐しく沙紀さんの口元をおしぼりで拭いて、さらには酒気を帯びてもいないのに自分の唇まで寄せる。沙紀さんが怒るが、どう見てもバカップルだ。

 うっわー、なんなんですか、あなた。
 沙紀さん相手なら、そんなになっちゃうんですか。

 あたしも結城も唖然として赤面して顔を背けているというのに、あたしの横にいる課長は至って普通にもぐもぐ。慣れきっているのか、動揺している様子がまったくみられない。さすがは鉄仮面。

「俺アメリカ帰りだから、スキンシップ激しいの。沙紀とふたりになるともっと凄ぇよ? こんな程度じゃないから。そこのアメリカ帰りもそうだろ、あんなに胸にキスマークつけるんじゃ」

 ……課長は思い切りむせた。


「カバ。こいつむっつりだろ、他にどこ触られた?」


 ……かろうじて抑えていたあたしも、思い切りむせた。


「ほらほらお前もそんな顔すんな、飯がまずくなるじゃねぇか。お前だって、髪下ろしたらわからなくなるところじゃなくて、もっとわかるようなところにすればいいのに。股なんてどうだ?」

 ……結城までむせた。


「よし、今のうちに上カルビ……」

「私のよ!」


 沙紀さんの一人勝ち。

 専務の突っ込みは肉を食べたかっただけなのかよくわからず、あたしは動揺を紛らわすためにビールを呷(あお)ってばかりいた。




***




 酒が回って、あまり考えられない。とにかくハイだ。

 駐車場で結城のでかい車が見えて喜んで走ったが、結城に襟首掴まれて後部座席に押し込められた。

「何が"帰りは皆でいい案を考えようね"、だ。お前は後ろで転がって寝てろ! タオル巻けよ、酔っ払い。香月、お前は助手席でいいか?」

「はい」

 遠くで、結城と課長の声がする。
 
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