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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

「そうか? 女群がってただろう」

「……」

「……」

「……おーい。鹿沼は寝てるし無礼講だ」

「……」

「寝たのか?」

「……。女なんて……。どうせ物珍しい異性だから寄ってきてるだけです。なにもない私なんて、誰も見向きもしない」

「そうかな……」

「そうです。好きか好きじゃないかはっきり言えというから、好きじゃないといえば、その数分後には私は冷血漢です。教えてくれというから教えたら、その日のうちに私がその子と付き合っていることになっている。私の真意なんて、誰も知ろうとしない」

「はははは。だけどわからないでもねぇな。俺だって後腐れねぇように断ったはずなのに、お前の名前を騙ったあのメールだろ?」

「あなたも私だとは思わなかったのですか?」

「ああ。そんな陰険じゃねぇだろ。お前は思いきりフェアにこだわってるんだから。……今度は俺の番だと鹿沼の電話で聞いた時、絶対裏工作出来ねぇ奴だなって確信したけど。まあ、ぶちギレたら今日みたいにどでかいことをするみたいだけどな。ああ鹿沼と付き合ってる宣言も驚いた」

「………」

「フェアついでに言うけど、俺と話している時はその一人称やめろ。会社じゃねぇんだから、そんなに逆毛立てなくてもいいだろう? まあ俺と線を引きたいと言うなら、仕方がねぇけどよ」

「結城さんは私が嫌じゃないんですか?」

「は? なんで?」

「突然現れて鹿沼さん取ろうとして、今日も邪魔したし。なんでそんなに普通に話しかけてくれるんですか? 余裕だから?」

「なに、俺余裕に見えるの?」

「……はい」

「だったら、俺よりお前の方がよほど余裕ぶって見える。これ以上まだ鹿沼を手に入れる切り札持ってるからそんな余裕なのかって。俺、かなりびびってるぞ? だから告る羽目になった。こんな予定じゃなかったのに」

「……そうですか? 全くそうは見えませんけど。……鹿沼さん、OKって?」

「なに、心配?」

「……」

「ははは、そう簡単にいく奴じゃねぇんだわ。お前もわかってるとは思うけど。恋愛で痛い思いしたから、恋愛経験値がない」

「……でも鹿沼さんを抱いてるんでしょう?」

「……ああ。でも特別な友達だと公言されてる。さて、どうすればいいか。これって余裕だと思う?」

「……」

「お前の方は実際のところはどうなんだよ。お前余裕なの?」
 
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