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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
 

「……」

「……」

「……寝たふりすんな」

「寝てはいませんが……、俺、なんでこんなことをあなたと話しているのかなと」

「話そらすな」

「……俺、他人を信じられないんです。会社は信用するしかないですが、プライベートでは。自分のことなんか特に。でも渉さん以外に喋ってるなと」

「鹿沼も信じられないの?」

「彼女は……別です」

「鹿沼とどこで会ったのさ。一目惚れじゃねぇんだろ?」

「……。鹿沼さんには忘れられてますけど、昔からです。昔から……」

「ふぅん? お前さ、いつもツーンとしてるけど鹿沼の前ぐらいは笑えてるか?」

「なんでそんなことを?」

「いいから。笑えてる?」

「……多分」

「はは、俺も喋ってるな。この俺に対する嫌味のようなハイスペックさを見せつけるクソ生意気なガキと仲良くなんてなりたくねぇのに、鹿沼の前で素のお前になれてるのかって心配にもなったし。人間笑いがねぇと、駄目になるからな」

「……」

「……」

「……あなたが羨ましいと思う。そういうとこ、鹿沼さんも信頼してるでしょう」

「そうか? 信頼されすぎでがんじがらめだぞ? 暴挙にもでれない」

「それでも……俺は縛ることも縛られることも、して貰えないから」

「……」

「飲み会の時、あのひとは俺よりあなたを選んで出て行った。話があると言ったのに、俺の前であなたの名前を呼んで……それであなたと朝帰りだ」

「……」

「俺の家に居た次の日には、あなたの前で水着になってキスマークをつけられている。……そんな状況で余裕なんてあるはずがない」

「うーん……」

「どうしました?」

「俺、なんか健気なお前を応援したくなってきちまった」

「え?」

「まあ、経験上のアドバイスとして、思い詰めない程度に全力だせ? あいつは難攻不落だぞ」

「はは……。なんですかそれ、あははは……」
 
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