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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
「……あのさ、鹿沼のこととは別のものとして頼んでいいか? 鹿沼のことは俺も協力するとか協力してくれとかは言わねぇけど」
「はい。会社のことですね? 渉さんに言われなくても、俺ももうシークレットムーンの一社員ですから。潰されるのをただ見てはいません。そちらの件については全面協力を。一緒に頑張りましょう……あ、鹿沼さんのこと以外ということで」
「さんきゅ。鹿沼も遠慮なく使えよ、こいつもバイタリティーあるし戦力になるから」
「はい、公私混同せずに上司権限で、びしびしいくつもりでいます」
「あははは。惚れた女こき使うつもりかよ、お前面白れ~」
「そうですか? あなたの方が面白いです。……聞き上手だし。俺は堅物だし、感情乏しいから、面白味なんてないです」
「じゃあそういうことで鹿沼諦めてくれる?」
「諦めません!!」
「ははは。ちゃんと感情あるじゃねぇか。何気にコンプレックスと見たけど、ひとに慣れてねぇだけだ。現にお前はちゃんと俺に感情見せている」
「……」
「お兄様がいい話をしてやろう」
「誰がお兄様ですか」
「だって俺ら課長じゃん。だったら威張れるの年じゃねぇかよ。今だけでいいから見栄張らせろよ、見栄」
「はあ……」
「よく聞けよ、たとえば営業やってるとな……」
なにか声が聞こえているのはわかってはいたが、理解することが出来ないまでに眠りこけていたあたしは、結城が課長にアンマッチと思われた営業話を延々として、そして課長も目をキラキラさせて聞いていることにも気づかず。
そして――。
「おやすみ。また明日……」
ベッドに寝かされたあたしが、誰に運んで貰ったのか、誰に唇のキスをされたのか、なにひとつわからずしてふわふわとした幸せな夢を見ていたのだった。