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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
 

 ***


 会社の危機を知った次の日――。

 朝、いつものように早く来たあたしは、それより早く来ていた課長と結城と、結城に言われて早く出社した衣里、そして社長によって、まずこの件はきちんと動きが出るまで伏せること、そして向島の名前は出来るだけ知らないふりをしておくことで、向こうを油断させようと社長に言われた。

 やはりと言うべきか、金曜の騒動者三橋さんと江川くんの辞職願が午前中に郵送されてきたそうだ。それで済んでしまえる神経も凄いと思うが、金曜の件は課長が被害を抑えたために、告訴はしないという社長判断。


 あたしは、先週のアポ通り課長を連れて挨拶回りに。本当はなにか起きるかもしれないから社内で待機していたかったけれど、あたし以外の皆が、多分なにか起こるとすれば社外からだから偵察に行けとのこと。

 予想不可能な状態の中、課長も同行して貰えるというのは凄く心強い。あたしは実はお化け屋敷の類いは昔から苦手で、ひとりっきりの時に、先になにかあるとか必ず起こるとか思うと、もう駄目なのだ。 

 黒いスーツを着た課長はやはり鉄仮面。

 この鉄仮面なら、お化けもなにも逃げて行きそうだ。

 リアル歩く魔除!!

 課長の顔には、課長の家で見たような拗ねたり笑ったりの表情は全くなく、ツーンとおすましになったこの鉄仮面ぶりを見ていると、課長の家に行ったことが夢の出来事のような気がしてくる。

 まあその方がいい。

 スケジュールはきつめ、公私混同はいけないんだから。
 
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