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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
当初の予定では、WEBが受け持つ大企業三十社を、一日三社十日で回ろうと、事前にアポを取りスケジュールを組んでいた。
勿論それは課長が編み出したタブレットのスケジュール表にきっちりと書き込んであり、その会社のことはそこからリンクしてある公式WEBに飛べばわかるはずだ。
営業用の社用車一台回して貰い、社用車で行くことになった。
社用車は5ドアのトヨタの白いアクア。
ここはあたしが運転すべきだと思っていたのに、課長は当然のように運転席に座った。
「……なにか?」
呆然と突っ立っているあたしに、怪訝な顔が向けられた。
エンジンがかかる。
「あたしが運転を……」
「私と一緒の時は、あなたはずっと助手席です。仕事でもプライベートでも。……いいですね?」
うぉぉぉ、プライベートあるんですか?
なんかにやけてきちゃうじゃないか!
……そんな気持ちを抑えて、営業スマイル。
「ではお言葉に甘えさせて頂きますわ。あたし運転へただから」
だって仕事中だもん。照れ照れなんてしたらアホじゃん。
極力、今までなかったように心を空っぽにして……。
「お邪魔します」
初めて彼が運転する車の助手席に乗ったわけではないのに緊張する。
右ハンドルがなんだか課長に合わない気がして、密やかにくすりと笑っていると、ハンドルを右に切りながら彼が言った。
本当になんでもないような声音で。
「今日は靴、履いてきてくれなかったんですね」
「――っ!!?!」
「……ほんのちょっとだけ、朝から期待してました」
なにこの罪悪感。
課長、そんな傷ついた顔しないでよ!
鉄仮面、鉄仮面! かぶり忘れてる!