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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
課長は自分のスマホを取り出した。
「あ、結城さん。香月です」
おおっ、いつの間に結城と仲良しに。
「はい。こちらは駄目です。そちらは……各課ひとりくらい、ですか。顧客は……はい、じゃあ転送して下さい」
スマホ通話をやめた課長は、皮鞄からタブレットを取り出し、顧客情報のボタンを押した。
シークレットムーンは、ムーン時代の二十三社と、忍月コーポレーションの方から回された五十八社、合計八十弱社くらいの顧客がいる。
その一覧リストの左端が、ところどころ赤くなっている。
「課長、これは……」
「サービスをやめたいと電話がかかってきた会社です」
「え、ええええ!?」
「今のところ、十五くらいでしょうね。今営業は真下さんが中心となって顧客の引き留めに動いているそうです。結城さんは電話を受けて、電話で待ったをかけているようですが」
「ああ……結城が指示してるんですか。衣里に」
本当は引き留めに行きたいだろうに。
「そして同時に、引き抜きも起こっているようです」
「ひ、引き抜き?」
「はい、社員の。今は各課ひとりの計算で辞職願を社長に出しているようです」
「社長にですか!? 直属の上司でなくて!?」
「はい。異常事態になりました。社長が集合をかけたようですので、今日はこのまま社に戻りましょう。なにか嫌な予感がする」
「嫌な予感って……」
課長はそれにはなにも答えず、代わって質問してきた。
「鹿沼さん。あなたはシークレットムーンが好きですか?」
「はい、大好きです」
あたしははっきりと答えた。