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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
***
社長室――。
結城がここ数時間の状況を説明する。
机の上に両肘をついて、顔を組んだ手の上に乗せている社長はじつに落ち着き払っていた。それが逆に怖い。冗談が出ない社長は、非日常だから。
「うちのデータが流出してるな。今は主にプログラム開発の顧客がやられているが」
"プログラム開発部の顧客"
持ち込まれるものは大体がその企業におけるシステム作りが多い。保険機関であれば、コールセンターを含むすべてのオペレータが管理している顧客データが見れるようにとか、遠隔にある関連会社と共通のデータが見れるような入力システムとか、常時管理されるものが多い。
アプリケーションを入れたパソコンだけで見れるようにするのか、それともセキュリティーかかったWEBでIDパスワードを入れれば会員にも見えるようにするのか、それはその企業の希望によって違うけれど、常時こちらからのフォローが入って、うちでサーバー管理しているところすらも辞めると言い出しているのは確かにおかしい。
前々からトラブルがあったとか、予兆があったわけではないのだ。
それとも、それを全社員が見逃していたということなのだろうか。
厳しい顔をした衣里がすっと出て言った。
「プログラム開発部だけに限ったことではないです。香月課長と鹿沼が回った大手のところも、辞めたいという表明を出してきたのですから、これはWEBの情報も流失している可能性があります」
WEBの顧客情報はすべてデータ化出来ているわけではない。
それでも管理しているところがあるとすれば、一番疑わしきはあたしのパソコンではないか?
え?
あたしのパソコンから!?
確かにあたしはプログラム開発部がシステムを作ったところのは、エクセルで簡易だけど表にしたりしている。
「まさか、あたしのパソコンからですか!?」