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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
課長の指が紙の中によく登場する、ひとつの番号を指す。
03-3573-00**
都内のFAX番号だ。
「この番号が長期にかけてやけに多いですね。この番号がどこのものか、皆さんはご存知で?」
皆が頭を振った。
「社長、そのパソコンにfiverciber社が法人用に出してる電話とFAX帳ソフトがインストールしてますよね」
「なんで知ってるんだ?」
「忍月に居た時、やたら渉さんから勧められて。あのひとのルーツはいつも社長に行き着くので」
「ははは」
「はああ!? 社長、そんな便利なもんあったら営業に回して下さいよ!」
結城が噛みついた。
「ズルすると営業は育たない。お前達が育ったのは、一から自分たちの身体で歩き回ったからだろう? 与えられた情報に縋るのは、マニュアル人間のすることだ」
正論を受けて、結城は口を尖らせながら下がった。
「調べるから、ちょっと待てよ」
社長が慣れた手つきでテンキーを叩いていく。
すると――。
「向島開発汐留本社、専務付秘書室――」
そう言った社長が皮肉気な笑みを浮かべた。
この番号がどこに繋がるかは、ここに居る皆は事前にわかきりきってはいたけれど、それでもこうして画面に名前が出れば怒りを禁じ得ない。
「最先端の情報を扱う会社が、セキュリティーを強くしていたというのに、原始的な方法で情報が流失したというわけか。しかもうちの社員から」
衣里が言った。
「向島から外から操っているにしても、金曜日のことにしろ、かなりのプログラムの腕前……というよりは、大胆すぎやしませんか? 普通うちの社員であれば、見つからないかびくびくしているものだと思いますけど。このFAXだって何ヶ月も堂々と勤務中に送っていたわけでしょう?」
「あたしもそう思う。うちの社員は、誘われたらついていくような、ちゃらついたのはいないと思います」
「前々から、向島が動いていたのもしれねぇぞ。もしかしてスパイが入り込んで、ゆっくりと内から懐柔していったのかもしれないな。こんな突然一丸に動かないだろう」
結城が頷く。