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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
「え~、バレちゃったんですか? ここはローカルなことに疎いと思ったのに。ああ、課長ですか~? さっすが~」
くすくす、くすくす。
悪気のないというような顔で千絵ちゃんは笑う。これが本当に悪気がないのだとしたら、純粋悪というものだ。
「あたしをばかにしないで!!」
あたしは壁のタイルを手で叩いた。
さすがにびっくりとした顔で千絵ちゃんは笑いを止めた。
「なんでこんなことしたのよ! これは会社に対する裏切りよ!!」
「そうかな」
「そうじゃないの!」
「他人のセキュリティがなんだと言ってる割には、自分のところのセキュリティ弱いんだもの。まずは社員のセキュリティ守らなきゃ。それを教えて上げたんです」
「千絵ちゃん!!」
「私、主任が大嫌いなんです」
あたしを好きだといった同じ顔で、彼女は言う。
「自分は出来る女だと自信満々で、全員が愛社精神を持っていると信じてやまない。社長からは目をかけられ、怖い怖い真下さんとは友達で、イケメンの結城さんから好かれているのに仲のいい友達とか言っちゃって。そうやって常に上に居れる恵まれた環境にいることは、主任の努力の結果とは違うでしょう? 私だって主任と同じ年で入社していたら、同じなんです」
あたしは目を細めた。
「それに課長が入社したら、課長をちらちら。結城さんが可哀想だわ」
「ちらちらなんてしてないわ!」
悲しい悲しい悲しい。
あたし達、仲良くやってきたと思ったのに。
あたしにエナジードリンク持ってきてくれたのも嘘だったの?
「結城さん焦ってませんでした? 不安だーとか言って、主任に告ったりしませんでしたかあ?」
あたしは思わずどもった。
「結局は皆、恋愛をしに会社に来ているだけなんです。誰も働きたくなんてないんですよ。お金を貰って結婚する相手に巡り会う腰掛けになったらそれでOK。会社のために尽くそうなんてスポ根、今時流行りませんからあ」
くすくす、くすくす。