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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
「三橋ちゃんに結城さんにふられたのは主任のせいだと告げたら、先に私が声をかけて迷ってた江川くんと実行に移しました。会社が駄目になりそうな不安が渦巻く今、皆は協力して率先して頑張ろうとしてますか?」
「………」
「もう少し、楽しんでようと思ったのに、バレちゃったかあ」
「あたしは、千絵ちゃん好きだったよ」
「あれぇ、過去系なんですかあ?」
「こんなことをする千絵ちゃんは嫌い。あたしが嫌ならあたしに来ればいいのに、こんなに多くを巻き込む千絵ちゃんは、卑怯で薄情で嫌い」
「な……っ」
「あたし、千絵ちゃんを過大評価しすぎてたのかなあ? どう思う?」
「私に聞くなんて馬鹿なんじゃないですかあ?」
「そうかもしれないね。千絵ちゃんに騙されてたもの。あたし千絵ちゃんって本当にいい子だと思ってたのに。馬鹿だったからそう思っちゃったのね」
「……っ」
「千絵ちゃんがここに居るということは、これからが始まりなんでしょう? 今度はあなたがなにかをしたのね? 電話でそう言ってたじゃない。クラウドってなに? またウイルスでも?」
千絵ちゃんは薄く笑う。
「私、二・三日後くらいに辞めるつもりだったんですよ、この会社を。もう私耐えられない~と被害者ぶって。どうせ潰れる会社だし、置き土産に残しちゃいました」
「……潰れさせないわよ」
「ふふ、せいぜい頑張って下さい。きっとこうしている今頃も大変だと思いますけど。ほら聞こえません? 電話の音」
確かに電話が鳴り響いている気がする。
「なにかしたの!?」
「さあ? 私はただシナリオを知っているだけですから。それと一応お世話になった先輩にこれだけ言っておきますね。これはあたし個人だけの問題じゃなく、向島の意志です。……私、向島社長の娘なんです。専務が兄で」
向島専務とは、FAX番号の先だ。
「何番目か忘れるくらい遠い異母兄妹ですけど。ここが潰れれば私も母も自由になる。私が来た時既に、この会社は狙われていた、というわけです。私はここの社員に転職を持ちかけれるだけの存在ではありますけど、私が囁いた通り本当に向島の正社員になれるかどうかは別の話ですけどね」
三橋さんや江川くん、そして今日辞めた元社員達は、口車に乗せられただけなのか。それはあまりにもひどすぎる。