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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
 

 顧客のクラウドが暗号化されてしまったということは、こちらからもそのサーバーを覗くことが出来ず、暗号化がかかってロック状態になっている。

 その暗号解除に課長は杏奈と乗り出した。

 大役を仰せつかった杏奈だが、嬉しそうだ。

 初めて対等に、いやそれ以上のプログラミング力を持つ人間に巡り会ったからだと思う。杏奈は理解されにくい人間だから、その格好をあたしが認めたことをずっと恩に思っているように、彼女を必要とした課長にきっと温情を抱いていることだろう。


「みつけた! 香月ちゃん、94s54df6123xpls4911345psik」

 課長が素早く読み上げられるものを片手でカタカタ入力する。

「解除成功。あと8つ」

「おっけ~」


 ……そんな簡単に、こんなに長いパスワードって解明出来ちゃうんだ。

 あたしなんて逆立ちしたってできやしない。

 あたしは、木島くんを中心に顧客のWEBのバックアップしているものの再現をして、なにかあってもすぐ切り替えられる準備をしている。

 ランサムウェアが解除出来たとして、それが正常に機能するのかわからない。そのために、原状回復とまではいかないなりにも、出来る限り再現しないといけない。

「よかったっすね、バックアップが15分前で」

「ええ。課長と杏奈に感謝よね」


 課長は既に、今日もなにがあるかわからないから、30分おきくらいにバックアップをとるように指示していたそうだ。

 そのため、ランサムの出る15分前のデータを最新として復元できる。

 課長、杏奈……。

 頑張って、これ以上顧客を離すわけにはいかないの。

 お願い、頑張って!! 


   ・
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 ……そうして三時間後。課長は杏奈とやりきった。

 ランサムウェアを手動で押さえ込んだのだ。


 データは現状のままほぼ回復出来たが、少し影響が及んで開けなくなったファイルもある。それはこちらのバックアップで回復し、最短で危機を脱せたのだった。
 
 結城は衣里は営業ら全員で、今被害に遭っていた顧客のフォローに走った。三時間で切り抜けた手腕を強調するのだとか。

 こういうところ、結城も衣里も動くの素早いから、彼らの力を信じよう。


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