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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
「なんだ?」
結城との関係もかなりよくなっている。大体は結城と課長と社長が一緒にいて、悔しいくらいに、お互いを頼っている。
あたしは、そこには呼ばれない――。
「結城さん、営業の何人かとタブレットを使って新規開拓をして下さい。今、三上さんがもう完成しそうなプログラムも武器になります。既存の顧客の引き留めは、残る営業とWEBがします。主任と私は、大手を回ります。それ以外のWEBのことについては、お願い出来ますね?」
課長の先には、ここ数日で頼もしく動くようになった木島くんがいる。
「まかして下さいっ、頑張りますっ!! な、お前ら!!」
しゅうしゅうしゅうと、意気込む木島くんの息が漏れた。
WEBから何人かでも残ったのは、木島くんが説得しているからだと、杏奈からこっそり聞いた。
そして木島くんからは――。
――主任に負担がかかりすぎると、三上さんに怒られて。それで根性つけるために、何日もホテルに泊まったっす! いかがわしいことではなく、あのひと、スパルタなんっす! 全然可愛くなんかないっす!
課長が出した課題を一日で仕上げてきたのは、杏奈が暗躍していていたようだ。あれだけのクマと腰を痛めたのは、外見を裏切らない体力をつけろとスクワットも課したかららしい。
そのおかげか、木島くんは元気だ。
杏奈、ありがとう――。
あたしと課長は、一緒に回るはずだった三十件のリストを覗き込んだ。
その中で辞めると言っているのは、二十件あまり。
「この中で、辞めさせてはいけない会社はどれですか?」
「一番厄介なのはここです。この親会社の紹介でかなりの数の子会社がうちのWEBやらシステムやらを取り入れてます。この前残業の時に見た、組合もここからの紹介なので。ここに抜けられたら……」
「担当は?」
「今は……常務です」
「では社長に会おう。真下さんのように、頭を叩いた方がいい」
いや、社長より確実なのは……。
『080-4659-2×××
satoru_kobayashi@……』
「………」
「鹿沼さん?」
レンズ越しの茶色い瞳があたしを見ていた。