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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
 


「あの、ここの副社長と面識があるので、ここはあたしに任せて貰ってもいいですか?」

「私も行きます」

「いえ! ここは結城が取ってきた会社なんですが、イケメンが行くとご機嫌悪くなるんです。結城も苦手なところで。だからあたしの方が適任だと思いますので」

「………」

「どうしました?」

「あなたが副社長に会いたいという理由はなんですか?」

「副社長は、会長の息子さんで社長より副社長の方が権限あると聞いたことがあって。社長は会長の娘婿らしく、副社長さえ落とせばそれでうまくいくと思いますので、確約をとります。社長相手ならば、副社長が反対したら覆ってしまう恐れがあります」

「………」

 じっとこちらを見る課長の目。

 やだなあ、課長は鋭いからあたし、怖いんだ。

「アポ取ってきます!」


 ……辞めたいと言っている小林商事を、そのまま辞めさせるわけにはいかない。

 元々副社長は違うところにしようとしていて、それを結城が去年強引にとってきたようなもの。

 あたしは昨年、結城と一緒に挨拶に行って、副社長と会ったんだ。

 副社長はひどく格好つけで女好きで、話している結城よりあたしを見ていて、結城が後でぶつぶつと怒るほど。

 その副社長から、帰りに結城に気づかれずに渡されたメモがある。そこには彼の電話番号とアドレスがあった。

 なにを意味するのかわかったから、あたしは連絡しなかった。

 簡単に寝る女ではないと憤りながらも、そのメモを今まで捨てられずにいたあたし。捨てようと思うと躊躇が起きるのは、副社長に未練があったわけではない。今思えば、なにか虫の知らせを予期していたのかもしれない。


 副社長と会おう。

 あたしが出来ることといったらこれくらいしかない。

 あたしは、課長のように頭がいいわけでもないし、結城や衣里のように営業力があるわけでもなく。ITの知識がちょっとあるだけで、仕事をまとめてきただけで、今戦力になっているとは思えない。少しでも会社のために役に立てるのなら――。

 相手に失礼がないように、まずはメールをしてみた。
 
『――、直接会ってお会いしたいことがあります。お伺いできる日時を指定下されば幸いです』 

 返事はすぐ返ってきた。

『本日夜八時。○○ホテル最上階、日本料理○○亭』
 
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