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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
そんな驚くあたしの前で、課長が静めた声を出した。
「合意ですか? 薬で動きを奪って欲しいと、鹿沼が言ったんですか?」
「そ、そうだ」
「この襖の奥の布団部屋、壁に物騒なものがあるんですけど、それも鹿沼の趣味で?」
課長が手でガンと襖を全開にさせた部屋には、あたしが見ていなかった……ムチやら蝋やら、いわゆるSMグッズが飾ってあった。
なにこのひと、あたしになにをしようとしてたの!?
「合意かどうかは司法の判断ですね」
「いや、それは……」
「会長、だってそうでしょう。刑法第177条の強姦罪は『暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする』。未遂とはいえど、性器の接触がある。これが強姦となるか未遂となるかも司法の判断にゆだねましょう。こちらも粛として対応させて頂きます」
司法にといいながら裁断する課長の声が冷たい。
寒いくらいに――。
「課長……待って……」
身体がざわざわする。なんだろう、熱でも出てくるんだろうか。
それとも、課長の冷気にあたったためなのか。
「告訴も、示談もしません……」
三人の目があたしに向いた。
「その代わり――契約を続行して頂けますか?」
***
『会長の名前にかけて、契約は続行します――』
超然とした笑みで会長と副社長を見送った後、そのままの顔であたしをくるりと振り向いた課長は、帰ろうとしたあたしの手を引いて物陰につれていき、怒った。
「なにを考えているんだ、あなたは!!」
その剣幕にあたしは小さく萎縮してしまう。
「杏奈が教えたんですか?」
「三上さんがわかるものなら、俺もわかるから! 俺が出かけていたのは、あなたが馬鹿なことをしでかした時のために、副社長のストッパー役となり得る会長を捕まえていたからだ。会長が移動していたから捕まえるのに遅くなった」
ああ、課長も調べたのか。