この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
「……なにも。課長がお水で流し込んで下さったおかげで、あたし動けるようになりましたし。回復していま……んぅぅっ」
課長があたしの耳を指で弄ったからだ。
いつも以上の感度になっているあたしは、唇を噛んでぶるぶる震えるしか出来ない。
「こっち見て」
「………」
「陽菜」
渋々と顔を上げると、生理的な涙で滲んだ課長が怒っている。
「身体が、辛いんじゃないか?」
「……いいえ」
「嘘つけ。そんな顔をしていて」
課長があたしを抱きしめた。
突然の抱擁にあたしの口から変な声が出てしまった。
「ここに泊まろう」
「帰ります」
「駄目だ」
「……立つのもやっとなんだろう?」
「………」
「あなたが軽い女ではないことは十分わかっている。ちゃんと二週間まで待つつもりだ。だけど、今のあなたを放ってはおけない」
「大丈夫、だから……」
「無理。俺も泊まる」
「あたし本当に……」
身じろぎするのも課長は許さない。
「あなたの身体を俺が鎮めてあげる。媚薬で変になった奴を、俺はアメリカで見ている。……あなたをあんな目にはさせたくない」
あたしの手に課長は指を絡ませる。
「……は、ぅっ、」
「結城さんは呼ばせない。俺があなたとホテルに泊まるから。いいね? 嫌と言われても、決定事項。俺に従って」
どくどくと波打つ心臓は、彼が欲しいから。
「今日の俺は、どうしてもあなたを置いてひとりでは帰れない」
だけど、これは媚薬のせいだ。
「……穢れをとってあげるから、あなたの身体を愛させて。あなたに奉仕させて」
満月とはまた違う吸引力が強い渇望に、あたしは涙を流しながら唇を噛みしめた。
課長と一緒に居たい――。
我武者羅にそれを感じるのは本当に媚薬のせい?
課長の匂いに包まれていたい。
香月朱羽という男と一緒に居たい。
他の誰でもない、朱羽が欲しい。
朱羽に身体を愛して貰いたい。
抗えないこの欲望に呑み込まれる寸前、まだ二週間経っていないから、決して繋がってはいけないと……、それだけをあたしを好きだと言ってくれた……結城への免罪符のようにして。