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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
***
火照る肌に、なにかが絶えず這っている気がする。
満月の時はそうしたあたしの感度などは無視して欲情が突き上がるけれど、媚薬効果は徐々にあたしを蝕んでいくようだ。
満月の状態が、関節を痛くきしませる40度の高熱に冒されているものだとしたら、今はゆっくりと38度になったような感じで、さわさわと悪寒のようなざわめきが身体を包み、熱で汗が滲み出てくる。
身体の深層が膿んだかのようにじくじくと疼いて脈打ち、患部を早く治療されたくて身体が震える。
深層から広がる熱と、湿った毒素が身体に回って、恋い焦がれているかのような、充足を渇望する強い疼きが強まっていく。
意識がありながら、呼吸ごと快楽の坩堝に引きずり落とされる感覚は、恐怖にも似て。息が上がる度に、強まる欲情が身体の細胞に浸透して、あたしじゃないなにかになりそうだ。
「もう少しだから。頑張れ」
暗闇で不安定に揺れるあたしを横抱きにして、素早く歩く課長の声と熱が支える。
囁く課長の息ですらびくびくしてしまうあたしは、課長の背広を掴んで、縋るように虫の息を繰り返す。
部屋が開き、そのままベッドに倒れた。
「ぅぅっ、く……っ」
横になって顔を手で覆えば、さらに身体の疼き具合がよくわかる。
満月の時のようで満月の時ではない。
あの時のように、狂ったように理性がなくならないのが、こんなに辛いなんて。
身体がじんじんして、たまらない。
「水飲む?」
欠けた月が課長の顔を、中途半端に青白く映し出す。
冷蔵庫から取り出したらしい透明なペットボトルが、月明りに反射して光った。
喉はからからに渇いている。
声が出なくてただ頷いた。
背広を脱いで椅子にかけた課長は、ペットボトルの蓋をあけると、あたしではなく……そのまま自分の口に含み、反り返った喉を見せた。
ああ、伝わってなかったのか。
「欲し……い」
カスカスの声でそう言うと、目で了解と言うように合図してきた課長が、あたしの上体を起こすようにした途端、俯き加減のあたしの頭を下から持ち上げるように顔を差し込み、あたしに口づけた。
口腔内の水をあたしの口の中に注ぎ込んで行く。
課長の匂いと共に。