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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「鹿沼主任はどうしてこの時間に?」
質問を質問で返すか! それ、社会人違うよ!
「見てわかりません? お掃除ですよ、日課のお掃除」
あ、誰にも内緒なのに、日課って言ってしまった。
雑巾をぷらぷらさせると、彼は一瞥した後、興味ないといった無表情さのままで机の上に、鞄を置いた。
このひと、コミュ障!?
ありがとうとか、なにか言えないのかしら!
心の中で叫んでも、この隙に雑巾を片付けるふりをして、皆が来るまで席に戻るのはよそうと思ったあたしに、ぼそりとした暗い声が届いた。
「……そんな程度か」
「はい?」
え、なに。掃除ありがとうじゃなくて、これで掃除なのかとか、文句言っちゃってる!?
ぷりぷりしながら背を向けたあたしに、また声が飛んだ。
「資料室にいます。申し訳ないですが、八時半になっても戻らないようなら、声をかけて下さいますか? 眠っているかもしれないので。私昨日……」
端麗な顔がこちらを向き、眼鏡越し、薄い茶色の瞳があたしを見る。
「……まったく寝ていないので」
詰るように、その目は細められた。