この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
***
「ん……」
目が覚めたら、あたしは布団をかぶってひとりでベッドに寝ていた。
寝ぼけた頭がぼんやりと昨夜のことを思い出した。
隣の気配がない。
「課長……?」
片側に手を滑らせても、彼がいない。
冷たいシーツの皺だけが、あたしの指の腹に不快なひっかかりを伝え、彼の生きた体温がないことに、あたしはぞっとして全身から血が引いた。
「どこ!?」
居ない、居ない。課長が居ない。
昨日のことがなにもなかったかのような静謐さ漂う部屋で、あたしの服だけが、開け放たれたクローゼットの中でハンガーにかけられている。
「どうして課長いないの!?」
急速に身体が冷える。
課長の家では、課長は眩しく微笑んで隣に居た。
なのに今は居ない。
いつ居なくなったのかわからない。
一緒に寝起きしたくないと思うほど、あたしは彼を怒らせたり嫌がらせたりしたのだろうか。
……もしかして、課長の触って飲んでしまったから?
だからあたし、課長に嫌われた?
だからあたし、置いていかれた?
だからあたし――。
景色がどっと漆黒色に染まる。
その中で、危険信号のように点滅するものがある。
ちかちかと光るそれは、血飛沫のような真紅色で、黒い闇を切り裂くような鮮やかな金へと色を変えて明滅し、次第に大きくなって膨らみ、丸い月となる。
まるで闇夜に浮かぶ満月のように――。