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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「な、なに?」

 木島くんがあたし達を見てにやにやしている。

「課長といい感じっすね~」

 周囲を窺うような小声で。

「木島くん!」

「いやね、こんな時だからせっかく付き合っても」

「付き合ってない「へ? 課長宣言してましたっすよね?」」

「はは……そうだったね」

 なにあっけらかんと笑っているんですか!

 元はといえば、あなたがそんな宣言したからでしょう!?

 笑わず否定、否定、否定!!

「主任も、課長にならそんな顔するんですね~」

「どんな顔?」

「オトメっす! ピンクのゆるふわふりふりが似合いそうな感じっす! なんか課長は全然変わってなくてクールのままだから、主任のごり押しのおつきあいっすか?」

「……課長、この子窓から捨ててきていいですか?」

「ひどいっす、ひどいっす!」

 くそっ、木島くんにからかわれるなんて。

 木島くんに、あの木島くんに!!

 課長の指が、あたしの手のひらに文字を綴る。

 "ごめん"

「いいですことよ、ほほほ」

 あたしは木島くんを見てから、課長をキッと睨んだ。

「それで主任、お願いがあるんですが」

「なに?」

「……いちゃつくなら、結城課長のいないところにして貰えないっすか? 俺、丁度間にいるから怖くて怖くて……」

 頭を横にすると、木島くんが隠している結城が見えた。

 ひぃぃぃぃっ!!

 奴に怒られる心当たりが多すぎて、なにを謝っていいかわからないけど、手を振った時とは雲泥の差。

 やだよ、あれ宥(なだ)めるの!



「独占欲が強いですね。……まあ、私もひとのこと言えませんけど」

 さらりと。あんな怒りをぶつけられながら、課長はあたしと手を繋いで、いやらしい動きをしながら、平然と説明を続けたのだった。

 鉄仮面は、あたしの予想以上に分厚いようだ。


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