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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「俺、何度も何度も頭下げにいっても、副社長は会おうともしねぇで契約辞めると頑なだった。それがなんで俺が会ったこともねぇ会長が出てきて、そんなことになってるわけ?」

「か、課長がね、落としたの会長を。ほ、ほら社長も副社長も会長には頭があがらないから、それなら会長をトップダウン……」

 そこには嘘がないし、最初からそう説明する予定で。

「お前は?」

「へ?」

「なんで会長の口から、お前の名前出る?」

「そ、それは……」

「俺、副社長に会うなと言ってたよな。会長の言い方だと、お前と副社長が会っていて、副社長がお前になにかしたのと言っているように聞こえたんだけど」

「そ、そんなことあるはず……」

「鹿沼」

「ゆ、結城課長怖い」

「怖くて当然だろうが! 香月が会長を動かしたのなら、お前が副社長となにかあると思ったからじゃねぇか!? 営業の俺通さないということは、それぐらいのプライベートの危機があったってことだろ!?」

 鋭い結城をかわせない。

「お前、俺がとってきた大手だからと、契約継続のために身体張ったのか!?」


 会社で結城が怒っていたのは、己に対しての気がした。黒い瞳には自噴に激しく揺れている。

 だからばれたくなかったのに。

 だけどあたしは嘘を貫き通す。あえて明るくけらけらと笑う。

 結城への営業モードだ。

「違うよ、結城。課長を交えて、会長と副社長でご飯したの。その時副社長が酔っ払って、あたしに触ろうとしたことを会長が気に病んで。結果的に継続になったから、ラッキーだったんだ」

「鹿沼」

 どんなに昨日の怖かったことを思い出しても、それまで結城が背負うことはないのだから。

 だから、笑え! 
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