この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
「あたしだって一応女だし、仕事のために身体なんて捧げないから。そんなご大層なものでもないしさ」
本当は怖かった。
覚悟していても、レイプされそうになるのは。
課長が来てくれなかったら、媚薬でどうなっていたかわからない。
「結城が気にすることはなにもないから。だから「陽菜!」」
「本当になにもなかったのよ、結城。そんな顔をしないで」
悲憤を堪えているような顔。
そんな顔をさせたくないのに。
「なにもないのなら……それは香月のおかげということだな」
「……え?」
「今まで俺だったのにな。お前の危機に駆けつけるの」
「……」
「俺がお前の近くにいたから、……自惚れてもいいなら、俺のためにお前そんなことしようとしたんだろ?」
否定しているのに結城には皆わかっている。
「長い付き合いだ。お前の考えくらいわかる」
「だったらこれもわかってよ。結城はただ笑って欲しい」
「……」
「会社を守りたいのは結城だけじゃないから。結城みたいに、社長はあたしのお父さんではないけど、結城と同じくらい会社が好きだから。六年前、結城がムーンに就職させてくれたの、本当に感謝してる。だから守ろう?」
「……っ」
結城があたしを抱きしめてきた。
結城の背中をぽんぽんと叩いたのは、結城の身体が震えたからだ。泣いているような顔を、あたしに見られたくなかったに違いない。
「会社と社長を守るために、笑って。結城が笑うと、皆もやる気出るから。社長も安心する。あたしも衣里も……」
「……俺の傍に居ろよ」
「……」
「お前が傍に居るのなら、俺はいつでも笑える」
胸を突かれて、苦しくなる。
「居るじゃん、今でも」
「香月の方を見てる」
「……気のせい」
「気のせいならいいんだけど、残念ながら俺、お前に関する直感鋭いんだ」
「あたしは……」
結城が絞り出すような声を出した。
「陽菜、好きだ」
「……っ」
「お前が女として絆されるなら、何度も言ってやるよ。いつでもどんなところでも、お前が好きだと。小っ恥ずかしいことも言ってやる」
「結城……っ」
「俺にも、香月に見せてたでれた顔見せろよ。ああいう女の顔を」
結城の言葉が熱い。向けられたあたしの胸が痛い。