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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

「あたしだって一応女だし、仕事のために身体なんて捧げないから。そんなご大層なものでもないしさ」

 本当は怖かった。

 覚悟していても、レイプされそうになるのは。

 課長が来てくれなかったら、媚薬でどうなっていたかわからない。

「結城が気にすることはなにもないから。だから「陽菜!」」

「本当になにもなかったのよ、結城。そんな顔をしないで」

 悲憤を堪えているような顔。

 そんな顔をさせたくないのに。

「なにもないのなら……それは香月のおかげということだな」

「……え?」

「今まで俺だったのにな。お前の危機に駆けつけるの」

「……」

「俺がお前の近くにいたから、……自惚れてもいいなら、俺のためにお前そんなことしようとしたんだろ?」

 否定しているのに結城には皆わかっている。

「長い付き合いだ。お前の考えくらいわかる」

「だったらこれもわかってよ。結城はただ笑って欲しい」

「……」

「会社を守りたいのは結城だけじゃないから。結城みたいに、社長はあたしのお父さんではないけど、結城と同じくらい会社が好きだから。六年前、結城がムーンに就職させてくれたの、本当に感謝してる。だから守ろう?」

「……っ」

 結城があたしを抱きしめてきた。

 結城の背中をぽんぽんと叩いたのは、結城の身体が震えたからだ。泣いているような顔を、あたしに見られたくなかったに違いない。

「会社と社長を守るために、笑って。結城が笑うと、皆もやる気出るから。社長も安心する。あたしも衣里も……」

「……俺の傍に居ろよ」

「……」

「お前が傍に居るのなら、俺はいつでも笑える」

 胸を突かれて、苦しくなる。

「居るじゃん、今でも」

「香月の方を見てる」

「……気のせい」

「気のせいならいいんだけど、残念ながら俺、お前に関する直感鋭いんだ」

「あたしは……」

 結城が絞り出すような声を出した。


「陽菜、好きだ」

「……っ」

「お前が女として絆されるなら、何度も言ってやるよ。いつでもどんなところでも、お前が好きだと。小っ恥ずかしいことも言ってやる」

「結城……っ」

「俺にも、香月に見せてたでれた顔見せろよ。ああいう女の顔を」

 結城の言葉が熱い。向けられたあたしの胸が痛い。

 
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