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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
「必要性がわからないんだけれど。陽菜が残業しているのなら、終わるまで外に私がいるって言うのは?」
「駄目、それ駄目! 一緒のフロアに居てほしいの」
「別々のところで別々の仕事をってこと?」
「そう」
理解出来ないと、美しい顔が苦悶に揺れた時、コンコンと音がした。
パーティーションを指でノックした、紺のスーツ姿の結城だった。
「おはよ。真下、お前残業の仕事あるから」
「は!?」
衣里は、あたし達と同い年だけれど、結城に命令されるのを嫌う。
般若の面を被ったような、凄まじい嫌悪感を顔に出した。
「拒否るの却下。お前が出張中に営業としての事務仕事が出来たの。だから残業。今、机の上に置いといたから。日中やるなよ、残業でやれ」
「私事務苦手なの、知ってるでしょ!?」
「事務仕事なんて、ふたりでやれば終わるから」
「ええ!? 残業、結城もいるの!?」
「当然。残業は上司の立ち会いの元が鉄則!」
「なに偉そうに、ちょっと課長になったからって。いい!? 絶対私は部長になって、あんたをこき使うからね!? 見てなさいよ、いい顔できるの今のうちなんだからね!?」
衣里はびしっと人差し指を結城に突きつけた。
「はいはい。……で、四国はうまく行ったか?」
結城の突然の質問に、衣里は満面の笑みで答える。
「勿論。私を誰だと思っているの? 分からず屋専務を納得させるために、社長を堕としてやったわ。これでリースやめて一括よ! おほほほほ」
直前まで結城に挑発していたといいのに、結城のひとことで嬉しそうに高笑いをする衣里は、結城の掌の上にいるとは思ってないだろう。
結城はあたしに肩を竦めて見せて、あたしに言った。
「ということで、鹿沼。今日と明日、俺と真下も残業だから。俺もおごりよろしく」