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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
休憩室には誰もいない。
「どうした、恋する乙女」
「は、は!?」
着席した第一声、衣里は笑ってあたしを見ながらケーキを食べる。
「私の席は結城の横なんだから、あんたと香月課長が見えるんだわ。ああ、美味しい」
「ねぇ、あたし……でれでれしてた?」
「うん。見ているこっちが胸焼けするくらい。なに自覚あったの?」
「そ、そんなに!? 自覚なんてないよ、結城に言われて。木島くんにもそんなこと言われたのよ。ええええ!?」
あたしは仰け反った。
「なんていうか幸せオーラ満開、みたいな。付き合ったの?」
衣里はスプーンを口に入れて聞いてくる。
「まさか! 付き合ってないよ!!」
付き合ってないのに幸せオーラ満開!?
なにそれ! 課長に手を繋がれて幸せ~なんて、ただのドMじゃないか。
「別に課長、あんたと付き合っていると宣言したんだし、それについてぎゃあぎゃあ言うのはいないと思うよ? うるさい連中は皆やめてくれたし」
「それはよくない。会社はそういうところじゃない。風紀を乱す」
「なに、結城が嫉妬に狂った?」
「狂った……というほどではないけど、ってなんでわかるの!?」
「ははは……。筋肉馬鹿は単純だからね、待てが解除されたら直球ばかりでしょう。それに比べて課長は涼しい顔して変化球ばかりだから、恋愛から遠ざかって曲がっていた陽菜の心のバットにカツンとあたるんじゃ?」
「なんだか、否定出来ないそのたとえ」
「あははは。だけどその様子なら、あの馬鹿にも望みはあるんだ?」
「……友達でいたいのが本心」
「じゃあそう言えば?」
「今までそう言い続けてきたんだ。それでも結城が動いたの。結城はあたしが課長を意識しているのわかってる。あたしは今まで見ないふりをしていた結城の気持ちを、受け止めないととけないの。それが結城への誠意だと思うから」
「あのさあ、陽菜」
衣里が笑った。
「そんなんだったら、結城との友情にも皹入るよ」
「え?」