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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 衣里はあたしの頭を撫でて言う。

「陽菜がなんでそこまで結城に恩義感じているのかわからないけど、恋愛感情や友情ではなく、結城睦月という人間があんたを助けたいと思ったから助けたんだと思う。結果恋愛感情がついてきただけで。だから陽菜もそこは切り離して考えるべき。あいつもそんなので気を惹きたいとは思わないよ? 男のプライドあるだろうし」

「………。結城、課長のことも信頼しているみたい。会社を立て直すのにすごく必要としているの。だからその選択が苦しそうで……」

「それは結城事情でしょう? あんたと課長がくっついて終わる友情ならその程度だということじゃない? 陽菜が過大評価していただけ」

「っ」

「本当の友情ならなにがあっても続くし、会社の仲間なんだから協力も当然。どちらかを選ぶんじゃないのよ、公私混同するなっていうの、あの馬鹿」
 

 すっぱりと衣里は言う。

「あっと、ここまで言ってなんだけど、これは私の意見。私は全能神じゃないから、真理を言っているわけじゃない。考えて結論を出すのは陽菜だけど、こういう見方もあるんだと、私の意見も結論を出す参考にして欲しい。納得いかないものは蹴って構わないから」

「うん、ありがと」

 六年目にして初めての恋話に照れるけれど。
 

「……なんか衣里に惚れそう」

「お~、おいで。お姉さまが可愛がってあげる」

「同い年で、しかもあたしの方が誕生月早いけど」

「はっは~、クリスマス生まれと大晦日生まれ、めでたい恋人になろうか」

 ひとしきり笑って、あたしはぼやいた。

「八年の結城と二週間の課長なら、普通ならあたしをわかってくれる結城に、迷わず行くんだろうな。結城は本当にいい男だし」

「馬鹿だけど」

「でも課長だよ?」

「営業力は認めてやる」

「あははは」 
 
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