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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
「ねぇ、課長はあんたのこと理解してくれないの?」
「……してくれる。というか、見透かされていると言った方がいいような」
「あの冷徹な目は怖いよね。私は嫌だわ、見下されているようで。あの馬鹿のようにつるみたい気はまったくしないわ」
衣里は本当にストレートだ。
それでもきっとあたしには、言葉を選んでくれているように思う。
「あの馬鹿も片思い歴持ち出すかもしれないけど、恋に落ちるのは一瞬なの。惹かれるのは、数分あればいい」
「衣里は……」
それは社長のことなのかしら。
尋ねようとした時、衣里は壁の時計を見て慌てて立ち上がった。
時計は12時をちょっと過ぎていた。
「ごめん、私12時半にいかないと駄目なんだわ。明日会社出てくる?」
「そのつもり」
「だったら明日帰りに飲もうか、女ふたりで!」
「うん、そうだね」
「……伝えられる、考えて貰えるってことはいいことだよ、陽菜。私なんて伝えることも出来ない。伝えたところで、考慮の余地なくあしらわれて本気にされないから」
衣里は長い髪を掻き上げて笑った。
「道が拓かれているあんたは幸せものだよ? いいんじゃない、陽菜がどちらを選ぼうとも、親友の私は、陽菜の選択を応援する。たとえ二股かけることになろうとも」
「二股は嫌だよ……」
「ふふふ、前に進みな、陽菜。恋愛は過去に捨てたものではなく、今するものだから。あんたが一生懸命考えた答えなら、ふたりどちらも納得するから。恋愛は誰もが傷つくの。綺麗なものなんて恋愛じゃない。さあ、硬い卵から、孵化しなよ!」