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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
衣里がどう思うのか客観的に聞いていたおかげで見えてきたものがある。
友達と思う結城の恋愛感情を否定すること、課長に満月のことを言うのを恐れることは、双方どちらかを喪(うしな)うかもしれないと恐れているのではないかと。
行方がわからなくなる「失う」ではなく、その存在が確実になくなる「喪う」。あたしは彼らを消したくないんだ。いなくなってしまうことに怯えている。
「同情か……」
誰よりも結城には笑顔で幸せになって貰いたい。
満月に縛り付けた結城をあたしから解放しないといけない……そう思えど、満月以外のセックスを結城が望んでいることに対して、あたしはYESとは言えないのだ。
結城が八年あたしを想ってくれたなら、その八年、あたしは満月以外のセックスを望んでこなかった。
幾ら最初の取り決めがあったとしても、どんなに結城はいい奴だと最初からわかっていたとしても、あたしは結城にはときめかなかった。恋愛感情だと思える気持ちが動いてなかった。
だけど課長には、九年前にセックスをしたことがあるとはいえ、満月以外にでも彼の求めに応じたいと思った。約束の日が満月でなければと何度思ったことか。課長に対して、今までにない動くものがあるのは自覚している。
結城を悲しませたくないけれど、それを理由に結城を選ぶのは、同情だと……そう衣里に言われた言葉が心に突き刺さった。
結城が好きなのに。結城を喪いたくないのに、課長に惹かれてやまない。意識でどうのこうの考えるより、もうあの匂いに包まれるだけでたまらない気分になる。まるで条件反射を植え付けられたパブロフの犬状態だ。
課長への性欲だけが勝っているのかと思ったこともあったが、課長の一面を知る度に楽しい気分になる。結城以外、あれほど警戒していた異性に対して、プライベートでふたりきりになっても構わないほどに。