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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
「でれでれか……」
公私混同できない、このままでは駄目だ。
とにかく、社内ででれでれと数人から指摘される事態はこの先回避せねばならない。今会社本当にやばいのに、あたしってばなにをしてるのよ!
「営業スマイル営業スマイル……」
いつもの会社モードを取り戻したい。
「やば……、溶けてきちゃってる」
ワイン色のキューブ方のケーキは、スプーンを入れるとヨーグルトと様々なベリーが細かいクルミ生地と混ざって出てくる。
いつもは甘酸っぱいその味が、なんだか味気なく感じた。
「課長に、満月のこと言わないと駄目だ。」
……ブルームーンを課長と過ごそうと思ったら。そこから始めようと思えば。
だけど、拒まれ課長を喪ってしまったら、あたしは立ち直れるだろうか。
遠い昔の高校時代のように、環境を変えて逃げ出すことは出来ないのだ。あたしはシークレットムーンと最後まで共に居たいから――。
***
昼食後、とにかく全神経を仕事モードに直す。
でれでれしないためには、課長の近くに居ない!
そう心に決めたが、もとより課長は忙しそうで席に戻ることなく、サーバー室で杏奈と籠もりきりだ。
でれでれを指摘した結城と衣里は営業に出ている。
「まだ帰ってこない」
課長がサーバー室に行ったきりなのが、無性に気になる。
杏奈とプログラムのことを話しているだろうことはわかるのに、そこにあたしが混ざれないのがあたしの気分を害する。
プロジェクトの内容はわかっているのに、その細やかなことを打ち合わせする課長と杏奈の会話を聞いていたら、機械語ばかりを話していてあたしには宇宙人が喋っているようにしか思えなかった。